自分が亡くなった後、自分の財産をどのように分けるかについて、残された家族の間で争いが起こる(争族が起こる)かもしれないということは考えたくないことかもしれません。しかし、仲のよかった家族が相続の発生後、遺産があることがわかると急に冷静な話し合いができなくなることは、現実にはよくあることです。

このような問題を、遺言書を作成しておくことで未然に防ぐことができる場合があります。

故人の残す、一番大切な財産は「家族」ではないでしょうか。これを、遺言書を作成しておくことで守ることができる場合があります。

遺言を書いておいた方がよい代表的なケース

1.子どもがいない

子どものいないご夫婦の夫が亡くなった場合、その相続人は、妻と夫の両親(祖父母)又は兄弟姉妹になります。妻に残された財産を渡したいと思う方は多いのではないでしょうか。また、亡くなった後に夫の両親や兄弟姉妹と遺産の分配方法について協議を行うことは、妻にとって多大な負担となることもあります。

このような場合に備え、子供のいないご夫婦には遺言書を作成しておくことをお勧めしています。

2.配偶者が自宅に居住し続けられるようにしたい

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者のその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住権)が令和2年4月1日、新設されました。

この権利についても遺言で設定することができます。

3.財産のほとんどが自宅等の不動産

このような場合にこそ、遺言を書いておく必要があります。

不動産を相続人間で共有とすることはあまり好ましくありません。相続トラブルのなかで最も多い不動産をめぐる争いを未然に防ぐために遺言書を残しておくことをお勧めします。

4.相続人以外の人にも財産を残したい

自分の財産を地域貢献のために使ってほしい、生前にお世話になった団体に寄附したい、相続人以外の方に渡したい等の希望がある場合、遺言書を作成することでその願いをかなえることができる場合があります。

5.再婚をしたが、先妻との間の子どもがいる

先妻との間に子供がいる方が亡くなった場合、その相続人は現在の妻と現在の妻との間の子、及び先妻との間の子になります。相続のトラブルを防ぐため、誰にどの財産を引き継いでもらうか、あらかじめ決めておくことが肝要です。

遺言書を作成することで誰にどの財産を引き継いでもらうか、指定することができます。

6.長年連れ添ったパートナーがいるが婚姻をしていない

法律上の相続人とされているのは、法律上の婚姻をしている配偶者だけであり、事実婚等のパートナーは含まれていません。

パートナーに財産を残すために遺言書の作成が有効である場合があります。

7.事業を継ぐ長男に事業用の財産を相続させたい

相続トラブルが発生し、後継者が事業用の財産を相続できなかったばかりに、事業を継続することが困難となることがあります。

遺言を含めて、事業譲渡の計画を事前に考えておくことが肝要です。

8.その他(上記以外の場合)

例えば次のような場合にも遺言をしておく必要があります。

  • 身体障害のある子に多くあげたい
  • 遺言者が特に世話になっている親孝行の子に多く相続させたい
  • 可愛くてたまらない孫に遺贈したい